2014年9月29日月曜日

津軽海峡ヒンデミット景色 1 (2014年版)

1000行詩走
1996年版制作の後、失われていった多くのものたちへの鎮魂のために



 第一部:1行より約100行まで

  


  「ごらん、あれが竜飛岬。北のはずれさぁ」
隣りの小母さんが言うので目を凝らしてみる。
ガラスはわたしの息で、さぁっと曇り、綿の薄幕のような白いやさしさの中に、たちまち、なにも見えなくなってしまう。
指先で拭いてみると、ガラスのおもての水の滲みのむこう、海が見え、はるか遠くに岬らしいものが霞んでいる。
遥かさも霞みもやさしい。
なんてさびしく幸せな、今のわたし。
わたしは、わたしの悲しみとさびしさに会うために生まれてきた。
今、さらに北へ行く。
さらに北の悲しみとさびしさのほうへ。
恍惚…
はるかに霞む、人類の、いっそうの悲しみとさびしさのほうへ向かうしあわせ…


聞こえ続けている歌…
にっぽんの一時期、(まだにっぽんがあった頃…)流行った
歌に似て…

……ゴラン、アレガ竜飛岬
北ノハズレ、ト
見知ラヌヒトガ、指ヲサス。
息デ曇ル、窓ノがらす
拭イテミタケド、
ハルカニ、
霞ミ、見エルダケ…………
 
(ふふふ、
(著作権サン、
(この表記、
(どう、する?
(どう、とらえ、る?
(ふふふ、
(表記自体はあたしのオリジナル、
(意味の流れは、著作権サンの、もの?
(ふふふ、

まだわたしも生きているかのような…

(…点、…点、…点、…いっぱい
(使おう、昭和の終わりから平成に入って
(小奇麗な技術主義があらゆる領野で進んだ頃に
(古いかのように隅に押しやられ
(蔑せられ捨てられた数々の表現、表現のかたち、口ぶり、
(それらを取り戻すために、
(取り戻すためなら、なんでも使おう、点、点、点、…
(平成をまるごと捨てるように
(昭和の終わりの感受性、思考のしかた、までも、
(まるごと捨てるように

まだわたしも生きているかのような…

はじめ、
かたくて、いい、
慣れなさ守り、
ぎこちなく、
抽象的、いい、

銘。
ジュール・ラフォルグ。
(はじまるために
(はじまるために
(そろそろね、かたちだけでも…(点、点、点、テン、…
吉田健一訳で。

〈何かもっと別な主題を、
〈もっと危険で高級なものを見つけなければならない。
〈我々が住んでいるこのありのままの世界で、
〈私はもっと危険なのを作ることにしよう。


ことばは

危険で
今日じゅうに食べちゃったほうが
いい桃 
                 
熟れきってル                 
こころの皮やぶって吸ってやらないと   
存在界ぜんたいが黄昏ル
(それに身をあわせ、
(生き残るもの、
(生き残らないもの、
数                    
五千とか                
ただ                
三とか  
(逸らし、同化し、反発し、…する
(のが生であると
(思えなくなってひさしく
霞につつマれた仙界マで行かなくても    
あたマはマだマだすてきです
〔ブルっクナー7番、
〔久シぶりにかけた
〔ジょージ・セる+        (そう、ミメーシスを
〔ウぃーンフぃルの1968     (逃れること、 
〔年ザルツブルク・ライ      (ふるいミメーシス的制度
〔ゔ、美しく、            (の反対側に出れば済むとは、
〔せルはブルっクナー      (そう簡単だとは
〔いい、甘くならないで、    (いうまい、デリダに倣って、
〔枯れた甘さ、いい、       (いや、倣うとは、
おしルこ喰わなかったかラ   (ミメーシス的行動ではないか、    
マラルメはだメなんだよ     (だが、「いや、
マルメろみたいな        (倣うとは、ミメーシス的
うマそうな名なんだけどねえ  (行動ではないか、」と反省するのも
マだ秩序だったから       (ミメーシス的反省ではないか
しだいに砂漠ルじゃないの   (沈黙、シナイコト
むしろ、わたしが          (沈黙、シナイコト
ベー
とー
べん
べん




(…以下、次号)




2014年9月27日土曜日

希望と潤いの郵便局、  くく、く、、、、く、





また(みずから)風景となるために
位置を
ずらそうとするのか 草が


立ちあがってきている、遠い河…
でも
身をかわし、
逃げて、

  宴のさなかの小平サン、


わずかひと茎を
より危険な圏域に傾がせるように 
馥郁たる運転手の娘 の の
その肌より
流れ落ちようとして落ちずに垂れる


サンマ焼きはじめ… 
     酸漿ほどの大きさと
  アカルミの
魂…


 (みんな、そう言われちゃうのか…
 (みんな、か…


七色の(光の加減で)変わる
虹鱒と玉虫の縁戚らしくもみえる中、途、半、端、な、
生、物、よ、


思い出を…大事にし過ぎる人だねェ…、
   そんなこと、
言われたって…
       
  まるでキャラメル箱みたいに、…

身をかわし、
逃げて、


婚礼だ!巌と軟体老婆の
また黄変した乾燥水と
ペン先でちくちく色づけられた
胎児の爪の甘皮のあたりに昇っていく丸い月との


トージョー、トージョー、と
聞こえもするがコージョー、コージョーかも
しれぬ ホージョー、ホージョーかも
しれぬ
谷もないのに
谷川サン、
とぽ、とぽ、とぽ、と、命の汁の垂れる音
とぽ、とぽ、
とぽ、…


また(みずから)風景となるために
位置を
流れ落ちようとして落ちずに垂れる
馥郁たる運転手の娘 の の
わずかひと茎を

柏原!


草が


ずらそうとするのか 草が
記憶されるためではないのに
(数あるうちの殊にその)半島に
朱色のペンキを塗りたくる流れ星が
ひよひよ


まるで洗濯頸椎のように
なめらかに岩川を進む 放逐の珊瑚 三島四島五島と
舐めまくって


都市生活者と目覚し時計界のカルテルが生温かいバナナを王の
透明膣にくっぴくっぴ くぴくぴ
舐めさせまくって(白髪のスマホめ、
(六界のどこに逃げた?
                  (うまい埃をさらに


耳に詰め込もうとして


敬礼してるでしョ?
誰にむかってか、まるで死後のように、黒ずんできた指震わせて、
(さみしいところだよねぇ、
(さみしいところだよねぇ、
(きしきし、音がするが、なぁんの音、あれ?
(きしきし、きしきし、…世界が
(ぜぇんぶ、
(きしきし、きしきし、…


暮れ方の大学の廊下のようで、ほの明かりが林のむこうに見える…
(…マタ、ヒトリデ、狂ッテイクヨウダ、
(ダアレモ、他ニハ生マレテサエイナイノニ…、


…河童!


でも
身をかわし、
逃げて、


…落ち着いてきたポトスの茎、くくく、く、、、、く、

   わがまゝに、
 春を鬻いで、股ぐらにドラえもん、


くくく、    く、


河童!
   おゥとも、河童!


希望と潤いの郵便局に
表敬訪問しておいでよ、六月からさらさらと
冷蔵庫を溶かして手帳にくっつけていたんだから
もう出来た頃だよ、


また(みずから)風景となるために
位置を
ずらそうとするのか 草が
軟体老婆の
わずかひと茎を
股ぐらに


…白髪のスマホめ、
落ちずに垂れる
その肌より
流れ落ちようとして
より危険な圏域に傾がせるように 馥郁たる運転手の娘 の の
朱色のペンキを塗りたくる流れ星が
(うまい埃をさらに耳に詰め込もうとして
虹鱒と玉虫の縁戚
七色の(光の加減で)変わる
胎児の爪の甘皮らしくもみえる
ひよひよ
婚礼だ!巌と
また黄変した乾燥水と
ペン先でちくちく色づけられた
昇っていく丸い月


記憶されるためではないのに…
(数あるうちの殊にその)
半島に
舐めまくって
目覚し時計界の王の洗濯頸椎のように


なめらかに岩川を進む 
放逐の珊瑚 


三島
四島
五島と
生温かいバナナを
くっぴくっぴ
舐めさせまくって


(六界のどこに逃げた?
        

都市生活者とカルテルが
透明膣に くぴくぴ

(白髪のスマホめ、


(六界のどこに逃げた?


希望と潤いの郵便局、  


くく、く、、、、く、



また(みずから)
位置を
ずらそうとするのか 草が


風景となるために   くく、く、、、、く、



くく、く、、、、く、









(キョウ、アシタ、アサッテ、

  

桐の
まだ枯れない葉々
街灯のあかりに濡れて
ちら、ちら、
風に揺れ

風に揺れ

―あゝ、なんて、みんな、
美しい夕べ

なつかしい
夕暮れの匂いが漂ってくる

未知の
夕暮れの匂いも
まじり入っている

地面から
苔と汚れの這い上がる
ブロック塀の
小路
抜けて

家並みのほうへ
繁みのほうへ

小さな区画の
忘れられた小墓地も
音なく過ぎて

まるで生活の果てに逢着したように
また彷徨が
はじまっている…

(キョウ、アシタ、アサッテ、
(イママデノヨウニ、来ルト、思ウナヨ、
(来ルト、思ウナヨ、…

風が鳴っている、…

音もなく
どこをも歩み過ぎるすべを
身に着け…

(キョウ、アシタ、アサッテ、

死者と生者のあわいに
いちばん死ンダ者として、ワタシ、
いちばん生[ナマ]者として、ワタシ、

風に揺れ

あゝ、たぶん、
風を
ちょっと揺らすであろう彷徨が
始まって、キテ、イル、

北へ
南へ
拝礼シ奉ル

東へ
西へ
拝礼シ奉ル

(キョウ、アシタ、アサッテ、

街灯のあかりに濡れて
ちら、ちら、

まだ枯れない葉々

(キョウ、アシタ、アサッテ、

ちら、ちら、




2014年9月26日金曜日

ほんとに入りたくなるカレー屋を見つけるのはむずかしい




いっぱい
いっぱい
いっぱい
家でやるべきことがあるので急いで急いで急いで帰ったら
バッグの中にあるはずの鍵が鍵が鍵が
ない
ない
ない
朝の出がけには家人がいたのでいたのでいたので
玄関に鍵を鍵を鍵を置き忘れて置き忘れて置き忘れて
出てきて
しまったのだ
しまったのだ
しまったのだ

一時間後に宅急便が来るように手配してあったしあったしあったし
玄関ドアの前には蚊もいるしいるしいるし
さあて
さあて
さあて
なにとなにをどうすればいいんだ
なにとなにをどうすればいいんだ
なにとなにをどうすればいいんだ
急いで考えてみるものの
みるものの
みるものの
いくら考えても
考えても
考えても
宅急便をべつの日に来るようにしてもらい
鍵は
鍵は
鍵は
家人の勤め先まで取りに出かける他ない他ない他ない
ひと仕事終えて疲れている中
疲れている中
疲れている中
1時間半かけて帰宅したばかりで
ばかりで
ばかりで
また40分ほどかけて都心に出かけるのは憂鬱きわまるが
きわまるが
きわまるが
取りに出かける他はない
他はない
他はない

そうして再び電車に乗って
乗って乗って
乗って本を開けば数十分で乗り換え駅に着き着き着き
乗り換えて最寄駅にも着き改札を出て階段を上り出したものの
上り出したものの
上り出したものの
家人から
用事があったので隣りの駅に来てくれとメールが届き届き届き
取って返してスイカし直して
スイカし直して
スイカし直して
いま降りたホームに戻って戻って戻って
いま来た次の電車に飛び乗って飛び乗って飛び乗って
隣りの駅へ
隣りの駅へ
隣りの駅へ

着いた隣りの駅の改札を出て出て出て
どっちに行けばいいかと思っている間に
思っている間に
思っている間に
家人が来て「はい、鍵。急ぐから、じゃあね」
と鍵を渡してくれたものの
渡してくれたものの
渡してくれたものの
なんだ
なんだ
なんだ
それなら改札を出ないでおけばよかったものを
よかったものを
よかったものを
と思うが後の祭り
後の祭り
後の祭り
もう一度同じ改札を入り直して
入り直して
入り直して
帰路につくべくホームへ向かった
向かった
向かった

しかし
切れちゃったんだな
切れちゃったんだな
切れちゃったんだな
ここで
ここで
ここで

わたしは切れてしまった
家に帰る気がなくなってしまった
なんだか
心底ほんとうに嫌になってしまった
けっこう疲れながら急いで家へと帰ったところで家に入れず
鍵を借りに出勤並みの距離を都心の繁華街のひとつまで出向き直し
そこでも駅から駅へとごたごた廻り
家に入るための鍵をやっと手に入れたところで
切れてしまった
切れてしまった
切れてしまった

カレーが食べたくなった

カレーかぁ

しかし
駅中のいい加減なのはいやだなぁ
バイトがあやうい作り方をしているような
レトルトのルーをかけて出してくるようなのはいやだなぁ
かといって
本格的なインド料理に入りたいわけでもないし
そういう時間でもない
かといって
かといって
立ち食い蕎麦屋のいんちきカレーもいやなのである
いつものことだが
外でカレーが食べたい時というのは困る
世にカレー屋はいっぱいあるが
こちらのその時々の望みにあうカレー屋はまずない
あんな簡単な食い物なのに
ぜんぜんふさわしい店が見つからないのがカレーなので
いやだなぁ
いやだなぁ

カレーだけではない
なんだか東京駅のオワゾの丸善に行きたくなった
本なんかいくらでも家にあるので買うべきではないのだが
なんだかモゾモゾしてきた
モゾモゾ
モゾモゾ
こういう時はろくなことがない
ろくなことがない
ろくなことがない
散財のやつめが
散財のやつめが
散財のやつめが虎視眈々と近づいてきている
消費税を
消費税を
消費税をフンダクラレそうな塩梅だ
そんな風向きだ
そんな血圧である
そんな体液の循環がはじまっていてもうダメだなこりゃ
もうダメなのである
もうダメなのである
もうダメなのである
行くしかない
東京駅へ

で着くと
だナ
ヴァロットン展のポスターが目に入って
あゝ見てなかったナ
ついでだ
見ておくか
見ておくか
見ておくか
と微妙に遠い三菱第一美術館へながながと歩いて行ってみると
なんだか知らないが長蛇の列
なんだかなぁ
なんだかなぁ
なんだかなぁ
20分だか30分は待つというので
や~めた
っとあっさりやめ(並ばない主義である。江戸っ子だからネ)
丸善に向かう
丸善に向かう
丸善に向かう

最初から丸善に行けばよかったが
と思いながらカレー屋ないかなとコギレイな飲食店看板を見ながら
歩いて行く
途中からは地下を通り
いつのまにかキレイになっちまったなぁと
感心しつつ寂しみつつ
あくまでカタカナのキレイなんだけどネと思いながら
キレイになっちまったなぁと
頭の中でくりかえしつつ
ながながと
ながながと
地下道を歩いて曲がって歩いてまた曲がって歩いて
オワゾ地下へ
丸善へ
ほんと飽きるよ
飽きます
秋ます
東京駅の地下道には

階上の丸善に昇る前に地下にカレー屋なんてあるかなと探すが
なくて
高いスープ屋チェーンがあるがそんなのはいらなくて
バルみたいなところにカレーの写真もあったが
なんだか気取り過ぎていて
外づらだけ取り繕った“おカレー”みたいで
まったくもってロクなものではなさそうで
となると
やっぱりなくって
やっぱりなくって
やっぱりなくって
そういえば丸善には有名なハヤシライスの店があったなと
ようやく昇っていく
ようやっとこさ昇っていく
ようやっとこさ
ようやっとこさ

オワゾの丸善にはときどき来るが
考えてみれば
洋書と文具の売り場しか見てまわったことがない
今日も同じこと
洋書と文具
いろいろ見たが
以前には気にもとめなかった現代フランス作家のDelphine de Vigan
Rien ne s’oppose à la nuitとか
Benoît Duteurtre
Le voyage en Franceとかを
はじめて買って読む気になったのだから
ときどき本屋に来て実地で本をぱらぱらするのは馬鹿にならない
ときどき馬っ鹿みたいに家の鍵を忘れてセルフ締め出し喰うのも
馬っ鹿にならない
馬っ鹿にならない
もっちろん
もっちろん
もちろん
買って読んだからといって
なにかの足しになるとはかぎらず
人生的に深まったり浅まったりするとはかぎらず
言語中枢刺激的にも燻った不完全燃焼しか起こらないこともしばし
しばしば
しばしば
増上寺
買ったからといって
ちゃぁんと読むともかぎらないが
(あァかぎらない
(かぎらない
(かぎらない
本は本
本は本
本は本
下から読むと「んほはんほ」
漢字仮名交じりで読む時のみ下から読んでも「本は本」
まったく別の次元の世界
わかる人にはわかるだろうが
わかるだろうがわかる人には
はに人るかわがうろだるかわ
わからない人にはわからねエだろうよ
そんな人にわからせる気はもうわたしにはねエんだ
ふと
ふと
ふと
ひさしぶりに開いてみたZolaの魅力にぐぐぐっと惹きこまれ
あゝこの文体がいまのわたしには要るのだったかと
Nana(ナナ)
L’Assommoir(居酒屋)
L’Oeuvre (作品)
を勢いで買うことにしてしまったのだよ
Nana
L’Assommoir
なんかはじつは家にちゃんと持っているのだが
あれは昔のFolio版で
いま目の前にある最新版のLivre de Poche版ときたら
奇妙なほどの面白さにわくわくしてくるほど
しかも絵入り・写真入り
なんだろう
この
わくわくさ
不思議
不思議
Zolaにわくわくするなんて

てなぐあいで
鍵を忘れて家をたまには出てみるものだろうよ
Zolaが待っていたのさ
Delphine de Vigan
Benoît Duteurtre
待っていたのさ

ちょっと聞きたいが
諸君!
Zolaの「ルーゴン・マッカール家の人びと」シリーズを
ぜんぶ読んだ御仁はどのくらいおられるか?
しかもぜんぶフランス語原文で読んだ御仁は?
うわァ面白そうだとわくわくしながら
この21世紀
今どきZolaを愉しそうに買ってくる御仁は?
とうに何代も時代遅れになったはずの自然主義文学のZola
なんだか奇妙に面白くなってきている感じなのだよ
というわたしの気持ちに賛同してくれる御仁は?
じつは今の日本がZolaの時代のフランスに近くなっていて
人間がふたたび激しく極端に獣化してきていると
機械の一部どころか全部化してきていると
思い至ってくれる御仁は?

こうして
鍵を忘れたことに気づいてダブリンならぬトーキョーを
6時間も
6時間も
6時間もユリシーズした後
フィリピン産バナナ6本や
6本や
6本や
長崎産天然ブリ3切れや
アメリカ産豚小間肉400gや
オーストラリア産グレープフルーツ4個や
いるま産水菜や
まだまだいろいろとあって
なかなかに重い
重い
重い食材の買い物までして
なんとか自宅に帰りついた時にはほんとうに疲れ果てて
荷を下ろすや
倒れ込んで寝入ってしまった
寝入ってしまった
寝入ってしまった

寝入るまぎわ
あまりといえばあまりの
あまりのあまりのあまりの
あまりの疲労のためか
もうもうもうもう人生がすっかり嫌になってしまい
もうすべてを投げ出してしまおう
もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう忍耐はやめよう
がまんして生を続けるのはやめようと思い
そうだ
もう死んでしまおう
などとつよく決心しながら寝入ってしまったが…

夕食もとらず
翌日まで10時間ほど眠り込み
どうやら
睡眠中に死と復活は済ませたようで
次の日
今度は仕事帰りに新宿紀伊国屋書店に寄って
またまた性懲りもなく
Zolaを買い足してきたのだった
Folio版の
La Fortune des Rougon(ルーゴン家の財産)と
Au Bonheur des Dames(御婦人がたの幸せに)
やけに面白そうなL’argent(金)は
買おうかな
買っとこうかな
買いたいな
どうしようかな
とさんざん迷ったあげく
買わなかったが
それは
版がそろそろ新しくなりそうだから
新しくなると文字が大きくなる場合が多いので
ちょっと待とうと思ったのだ
思ったのだ
思ったのだ
思ったのだ

言い忘れたのは…
そう
けっきょく
カレーは食べなかったということ
丸善ではしげしげとショーウィンドーのハヤシライスを見つめたが
やっぱりやめておいた
自分が食べたいのとはちょっと違っていたからで
やっぱりカレーはむずかしい
ほんとに
その都度その都度の時点で
ほんとに入りたくなるカレー屋を見つけるのは
むずかしい