2010年9月30日木曜日

東からの風

東からの風がつよいね
寝室の
南の窓を開けはなったら
そこからも風
暑かったきのうまでが
うそみたいな日
ひどく蒸していたのに
昨晩の激しい夕立が
ぜんぶ拭きさらっていったみたいだ

こんなすてきな日には
なにも考えないのがいい
あれこれ迷うのも
仔細に検討するのも
たいして意味はないものだと
もうわかっているのだし

冷やしておいた水を
そのまま飲むのが
こういう日にはうれしい
コップを持ちながら
人間っていうのは
どこかの方角を
向かなければいけない
どちらを向いても
きょうはすてきな空がある
うすくむらさきがかった
あこがれのような雲
ほら
あそこにも
そこにも

こんな空の日
人間であるのは
そうわるくない
東からの風が
やっぱりつよいね
そろそろ暮れ方
あこがれのような雲は
どんどん色を増し
大空全体に
あこがれが広がる
水の入ったコップも
ぼくらのこころも
それを逐一写しとるだろう
そうして
いつものように
忘れていく
なにも保たない
コップは空になり
こころもからっぽになり
あしたには
またあしたの
あこがれを
受けとめるだろう

(『ぽ』304号・2008年7月)

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