この世は慣れないホテル
宛がわれたルームだけには
なんとか慣れたけど
廊下に一歩出ただけで
なんだかビクビク
どこでだれに
なにを見られているか
どんなふうに見られるか
心配そんなに
することはないんだけど
しちゃう心配
あわれあわれ
オノボリサンな魂よ
慣れないホテルに
ちょっと
ちょこっと
慣れるがための
それだけの
この世の時間でした
慣れたころには
発つのだよね また
べつのどこかのホテルで
ゼロから慣れ直し
投宿先を何十もかえれば
いつかは
最初から余裕の旅人
なるかな
なれるかな
詩としては
(平易を宗とする詩のばあいは)
ここで
やめたほうがいい
けれど
どこから来たのか
故郷はどこか
思ってない
なんてことない
と言ってはおきたい
でもさ
むずかしいわけさ これは
故郷でもないところを
ごたいそうに
称揚しちゃったりして
大がかりに道に迷う
ってなことに
なる
なる
なる
宛がわれたルームに留まって
うす汚れた壁や
意外ときれいな窓なんかを
眺めていたほうが
迷わないね
まずは
ルームを見まわして
壁から調度まで見つくして
驚いちゃうことだ
大宇宙のさなか
こんなちっぽけなところに
わざわざ
じぶんは籠っている
無限の大宇宙のさなか
たったこれっぽっち
ここにしか
じぶんの場はないんだってさ
と確かめて
まいったね こりゃ
まいったね こりゃ
なんて
ひとりごとしてみる
真理とか
法則とか
いろいろ言う人たちがいたけれどね
驚くなかれ
《まいったね こりゃ》
以外の出発点は
ないんだぜ
大宇宙のさなかには
無限との
つきあいかたには
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