2012年4月1日日曜日

…、命





庭木の奥の
玄関の暗いオレンジ燈が
菫の蕾を
照らしている

(だあれもいないから、ね…)

まだ冷える
春先の晩

季節のからだが
温かみを持ってきている

(だあれもいないから、ね…)

仄暗さ、甘さ、

ふいに
もう、さびしくない
晩となり

つっかけを穿いたまま
思っていた
晩春への、
たぶん、…キス

(だあれもいないから、ね…)

初夏への、キス、…

いちばん
さわやかな香りの
氷菓
今年はさがすよ

(だあれもいないから、ね…)

照らされている
菫の蕾

冷たいなか
冷たいままで
準備されていく
いくつかの

やがて、
…とりどりの色

…、命


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