見渡さず
路地から路地
見晴らさず
見通さず
こびりついた泥や埃や芥
角には詰って
土のようになり
露地では
小さな雑草の芽さえ生えている
拡がらぬ視界のまま
路地から路地
暗黒でなくとも暗いままの
道ともいえない道を
昨日の友は
影
路地から路地
今日の友は
蜉蝣
路地から路地
借りたままの言葉で
借りたままの思考を紡ぐ
概念は粗悪な複写
見晴らさず
見通さず
意識という酔いから
醒める
その方向への
後退
退嬰の花
咲き満ちはせず
ひとつ花
ふたつほど蕾
路地から路地
本当の陽に
当たっていない長期間
好ましい菌糸類を
せめて養い
主権を譲る修養は
積もうとする
幻影さえ思い出さないのは
よき兆候か否か
石畳に私の骨が転がる
股関節の大きな球状の骨
地球よ
倹しい貢物を受けよ
汝から借りた元素から
作り成したわが玉
ふたたび数億年ほどは闇に沈もう
原油のような闇の寝床
もう光には逃れまい
エネルギーの虚構にも
本当のことを見るのを
なにが阻んできたか
くだらない時代が時代に続き
ただ精子卵子を育むため
肉のついた骨が馴れあって
時を不味そうに食んでいる
救いは空の青
海の青
野の緑
山を下る霧
星々!
墓はいらない
日々
墓を掘り進んでいるから
路地から路地
墓
視界を失い尽くすためだけ生が与えられる
もう借り物の口吻も捨てる
あらゆる構造は錆ついた
目なら楽天市場で売っているだろう
考えや感受性のセールも
いつもヤフオクで
愛なら
フリーペーパーの脇のボックスにも
いっぱい
路地から路地
墓
私には
私の滅び方
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