2012年4月3日火曜日

私には私の滅び方




見渡さず
路地から路地

見晴らさず
見通さず

こびりついた泥や埃や芥
角には詰って
土のようになり
露地では
小さな雑草の芽さえ生えている

拡がらぬ視界のまま
路地から路地
暗黒でなくとも暗いままの
道ともいえない道を

昨日の友は
路地から路地
今日の友は
蜉蝣
路地から路地

借りたままの言葉で
借りたままの思考を紡ぐ
概念は粗悪な複写

見晴らさず
見通さず

意識という酔いから
醒める
その方向への
後退

退嬰の花
咲き満ちはせず
ひとつ花
ふたつほど蕾

路地から路地

本当の陽に
当たっていない長期間
好ましい菌糸類を
せめて養い
主権を譲る修養は
積もうとする

幻影さえ思い出さないのは
よき兆候か否か

石畳に私の骨が転がる
股関節の大きな球状の骨
地球よ
倹しい貢物を受けよ
汝から借りた元素から
作り成したわが玉

ふたたび数億年ほどは闇に沈もう
原油のような闇の寝床
もう光には逃れまい
エネルギーの虚構にも

本当のことを見るのを
なにが阻んできたか
くだらない時代が時代に続き
ただ精子卵子を育むため
肉のついた骨が馴れあって
時を不味そうに食んでいる
救いは空の青
海の青
野の緑
山を下る霧
星々!

墓はいらない
日々
墓を掘り進んでいるから
路地から路地
視界を失い尽くすためだけ生が与えられる
もう借り物の口吻も捨てる

あらゆる構造は錆ついた
目なら楽天市場で売っているだろう
考えや感受性のセールも
いつもヤフオクで
愛なら
フリーペーパーの脇のボックスにも
いっぱい

路地から路地

私には
私の滅び方


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