満月。思い出さないことが
いっぱい
思い出すことは
ほとんどなくって
日暮れ前に見た
白いチューリップの
落ちた花びら
その根元の黄色が浮かび
初夏に入っていく
暑くなりはじめた空気
すこし厭わしく…
でも
いい季節じゃないか
今年のさかりが
また来る
梅雨も来るが
アジサイも咲く
アサガオも咲く
ヒマワリも咲く
そんな月が
四つも過ぎれば
また
寂しくなり
また
みんな
それぞれの死のほうに
寄っていく
なんといっても
今はまだ
みんないっしょに
生きている
なんといっても
あの頃は
みんないっしょに
生きていたっけ
―そんなふうに
だれか
死に遅れた人が
思うだろう
思い出すだろう
今年の
夏
今年のさかりが
また来る
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