とくに書きたいこともない夜更け
二つ三つ
ことばを記そうとし始める時がいい
うちの中は静まりかえって
部屋から廊下へのドアは開けたままにしてある
廊下の灯りは消してある
そこまで来ている闇が見えている
ペンを持って紙に向かう場合もあるが
たいていはパソコンに向かう
部屋の灯りは点けてあるが
ときどき消してみたくなる
消してみる
すると電灯の音が消え
見えない波の打ち寄せも消えて
深い海の底で手もとだけを照らし
作業をしているようになる
その闇に驚く
というより
電灯を消せばこんなに暗いところに
平気でひとりいたことの異様さにむしろ驚く
灯りとは奇妙なもの
点ければ明るい
消せば暗い
あたりまえのようでも
ON・OFFでの一瞬のこの変貌
太陽がなくなったら
もっと深い無限の闇だけになり
なにもかわらないのにすべてが消えたも同然になる
墓の中もこうだろうか
火葬前の棺桶の中もこうか
明るいほうへ
光のほうへ
誰もが向かおうとして行き着く最後の場所は
底なしの闇か
超克の光があるだろうか
こんなことを書き記しながら
つい数分前まで思ってもいなかったこれらを
ちょっと読み直し
そろそろ
寝ようかな
眠ろうか
と思う
眠りは喜ばしい闇
心の灯りまですっかり消して
どこに落ちていくのか
落ちていった先で
また逢うのか
だれに?
だれが?
…と考えながら
まだ
寝ない
もう少し
眠らないでいる
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