2012年6月21日木曜日

もう少し眠らないでいる



とくに書きたいこともない夜更け
二つ三つ
ことばを記そうとし始める時がいい

うちの中は静まりかえって
部屋から廊下へのドアは開けたままにしてある
廊下の灯りは消してある
そこまで来ている闇が見えている

ペンを持って紙に向かう場合もあるが
たいていはパソコンに向かう
部屋の灯りは点けてあるが
ときどき消してみたくなる

消してみる
すると電灯の音が消え
見えない波の打ち寄せも消えて
深い海の底で手もとだけを照らし
作業をしているようになる
その闇に驚く
というより
電灯を消せばこんなに暗いところに
平気でひとりいたことの異様さにむしろ驚く

灯りとは奇妙なもの
点ければ明るい
消せば暗い
あたりまえのようでも
ON・OFFでの一瞬のこの変貌
太陽がなくなったら
もっと深い無限の闇だけになり
なにもかわらないのにすべてが消えたも同然になる
墓の中もこうだろうか
火葬前の棺桶の中もこうか
明るいほうへ
光のほうへ
誰もが向かおうとして行き着く最後の場所は
底なしの闇か
超克の光があるだろうか

こんなことを書き記しながら
つい数分前まで思ってもいなかったこれらを
ちょっと読み直し
そろそろ
寝ようかな
眠ろうか
と思う

眠りは喜ばしい闇
心の灯りまですっかり消して
どこに落ちていくのか

落ちていった先で
また逢うのか
だれに?
だれが?
…と考えながら
まだ
寝ない
もう少し
眠らないでいる


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