2012年9月10日月曜日

死んでしまっているのにふしぎだ



死んでしまっているのにふしぎだ

買い物に出かける
用足しに出かける
手紙には返事を書く
払うべきお金を払う
喜怒哀楽のようなものが少しはある
あれこれについて考えたりする
死んでしまっているのに

わずかのことば
わずかの動作
どれにもたましいは動いていないのに

死んでしまっているのを自覚しているぼく
ぼくはほんとうに死んでいます

きぼうも
よろこびも
おもしろみも
これほどまでにない
ということを
生かされている
ほんとうに
ほんとうに
なにもおもしろいものがない
街に出たり
本や映画を見たり
酒を飲んだり
こみゅにけーしょんしたり
草花を植えたり
青空を見つめたり
いったい
なにがおもしろいのか
わからない

まったく動かないたましいを
日から
日へと
運ぶ

楽シンデイル
意義深クシテイル
と自慢ごっこする人々から離れて
いや
離れられずにかたわらに居させられて

ぼくはぼくの味気なさに
やはり馴染めなんかできずに
ぼくの砂漠に
やはり定住なんかできずに
ぼくの言うことのなさに
黙ってもおれずしゃべっちゃったりして

死んでしまっているのにふしぎだ
からだを動かしたり
たましいをさがしたりしている
持ちこたえる力がどこから来るのか
ふしぎだ
地盤も
神も
天使も
友も
助けも
なにもありはしないと知っているのに
知らされてきたのに


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