2012年9月10日月曜日

フェラガモのサングラスをずらして



ぼくはお金なし
でもちょっと友だちがいてね
海辺にも山にも
ときどき遊びにいける
かれらはお金持ち
ぼくがみごとにお金なしなもんだから
かれらとしちゃ
気持ちが楽みたい
自分よりお金持ちになる気配はないし
もうけ情報を利用できるようなツテもないし
おい、ちょっと別荘にこないか
そう呼ばれて
(電車賃けっこうかかるなあ)
なんて思いながら行くと
いろいろおしゃべり相手になって
夕方にはテラスでカクテル
そのあとはステーキパーティー
お金なしであっても
現にありついている肉の旨さは現実
王宮に奇跡的に重宝された
ラ・フォンテーヌみたいな気分
古今東西お金持ちは
いくらお金があっても
ひとりでいてはつまらないから
ぼくみたいなお金なしの
おしゃべり相手を求めるものらしい
おかげさまで
この高原の朝霧の静寂
この海辺の夕方の潮騒
お昼のテラスのシエスタ
太陽がいっぱい
なんてつぶやいちゃって
まだ生きてるもんね
なんとかかんとか
そんなふうに思いながら
フェラガモのサングラスをずらして
またドンペリに手を伸ばしている


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