どこの党がいちばん
すみやかに国を滅ぼしてくれるかと
聴き耳を
選挙演説に立ててみようかなと
思いはしたが
思っただけで
やはり聞き耳は立てず
べったら漬けを
しこしこ
しこしこ
噛んでいる
冬だから
ぬか漬けが品薄で
さびしい
秋まで
うまいぬか漬けを
売ってくれた
八百屋のにいちゃんが
頭までフードをかぶって
え~、らっしゃい
らっしゃい
言っているが
頭だけで
やあ
とあいさつするだけで
立ち止まらないで
過ぎる
もう少し行ったところの
安い八百屋でだいたいのものは買うが
この頃は
増えてきたなぁ
茨城産
千葉産
きわみの福島産
風評被害というなかれ
消費者は自由なのよ
なに買おうと
買わなかろうと
どんどん消費者を自由にして
それで結局負けたニッポン経済よ
偉そうにしてんじゃ
ねえよ
消費者が飛びついて買うような
ものを作るのを怠けた
ニッポンよ
おまけに自爆しやがって
偉そうに
してんじゃ
ねえよ
寒い
寒い
寒い
寒いと
うるさい
冬だろ
あたりまえだろ
他の話でもしろ
あむい
かむい
さむい
たむい
なむい
はむい
まむい
やむい
らむい
わむい
んむい
とか少しはヴァリエーションを揃えて
スカイツリーを遠目に見ながら言ってろ
もうたいていの言葉は聞き飽き
たいていの喜怒哀楽には倦んだ
飽き飽きする下らないコンビニ国家
ソビエト時代のモスクワに
だんだん似てきてるぞ
人がどんどん人でなくなっていくだけの場所
ただ生きているだけで
ただ歳をとって
ただ死んでいくだけのところ
ぼくらはいつも境界にいる
ぼくらの一皮先にたぶん天国がある
しかしぼくらは皮一枚のこちら側に留まり
さびしく情けなくへたれて
人生など続け
新しいパン屋ができたと見れば
ためしにバゲットを買ってみようと思い
トングを伸ばしたりする
やめだ
そんなことはすべて身体や時間や空間にまかせて
出航だ、ふたたび
社会や現世とやらが要求するものは皆くれてやって
かたちもなく音もしないものだけで
明日あさってといわず
いま発つ
まるでロマン主義でも古風に信じ込んでいるように
バイロンのびっこの足の音
ドラクロワの緑のスカーフ
夜のパリを行くネルヴァルの黒マント
そんな懐かしいすべてを
お望みならどれも抱え
時代錯誤が生むわずかな裂け目から
現世の楽屋裏のむこうへ
―あほらしい!
信じているとでも思うか
自分が口にする言葉を
借り物でない自分の言葉だなどと
思ったことがあるとでも見えるか?
自分の思いが自分のものだと?
自分の体が自分の体だと?
その程度の夢なら2,3歳で覚めているさ
生涯これ晩年
と大仰に言うだけのわけはあるのさ
幽霊も来なくなった
城でながい人生を過ごしたことがあった
書物はみな読んでしまった
重ねる年齢は目を聴覚を苦くし
世界はティーカップの底の紅茶の残り膜程度になる
飽きて飽きて飽きてしまい
ビニールのぐにょぐにょを揉んでいるだけが
なんとか楽しめる感触になってしまった
そんなところから来たというのに
どうしてここを
楽しめるというのか?
自己満足に陥らないかぎり
盲目を都合よく
目の周囲に張り巡らさないかぎり
ものが多過ぎる
わずかのものを愛でる時間と
覚悟が
少なすぎる
心の底に
みずうみが見えなくなって
ひさしい
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