2013年4月25日木曜日

さふさふ




 
またきょうも助けるべきひとをだれも助けずに
ちょっと値の張るバウムクーヘンなど食べている
うつくしくあり続けたい
お嬢さん  
     
すぐとなりに
           それほどわるい心根でもないらしい
若者がひとりであまいラテを飲んでいるけれど

それほどわるい心根でもない
             ことなどなんのおもしろみもなく
お嬢さんはみらいのようなカフェの入口のほうを見つめている

みらいはいつも
とおくない入口のむこうに
とおく感じられるのでなければいけないから
じぶんがいる席のちかくを
みらいへの入口のように見つめることはない

だれも助けないからといってわるいひとではない
いいひとになれといわれて地球にこびりついているのでもない
ちょっと値の張るバウムクーヘンを食べていれば
                      いい
たぶん
食べられるうちは
食べられるときには
たぶん


ところで
なにをしている
わたし
なのだろう

ふかくもないしりあいというだけのことで
お嬢さん
あなたに
バウムクーヘンなどとってあげて
さふさふ
あなたが食べるのを見ている

なにも他意はないのだ

さふさふ
あなたが食べるのが
食べるのを見ているのが
ここちよい
それほどわるい心根でもないらしい
となりの若者にさえ目もくれず
さふさふ
さふさふ
食べているあなたを
なにも食べずに
見ている

よかったら
あげよう
わたしの前にあるバウムクーヘンも

さふさふ
さふさふ

もっと
さふさふ

させるために

させ続ける
ために




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