あっという間に
老いていってしまう
なんでも
かんでも
むかし住んだところに
偶然立ちよったら
新しくなっているものも多いが
古い壁や柱が
そのままのところもあった
どれも色がかわって
傷が増え
汚れや苔が生えのぼって
かつてはよく寄りかかったというのに
いまでは
そんなことをする気にもなれない
足をひきながら
よろよろ歩いていく老人がいたので
よく見ると
むかし知っていた人だった
スポーツマンで
いつもあたりをジョギングし
テニスラケットを抱えて
ちかくのコートに行くのを
よく目にした
きれいな毛の大きな犬を連れて
毎朝散歩していた
収集車が行った後のゴミ集積場で
かろやかに箒を動かしていることもあった
引退前から悠々とした暮らしぶりで
きっと
自由のきく優雅な職に
就いているのだろう
と思っていた
細かいことはわからないまゝだが
あゝだった人がいまでは
こんなになってしまったのか
あんな溌剌とした近所のおじさん
もうジョギングも
テニスも
やりようもないからだになって
空から押さえつけられているように
あたまを下にむけ続けて
これだって
50年も経ったからというわけではない
せいぜい20年ほどの変化なのだが
この20年を
長いというべきか
そんなことはないと
持ちこたえるべきか
あの頃と同様に
まだキビキビと動けている
じぶんのからだには
とりあえず
感謝
これから20年後には
さあどうなっていることやら
いま目の前に見ているのは
20年後のじぶんかもしれない
襲いかかるからだの変化に負けず
それでもこんなふうに
よろよろとでも
歩き続けていられるか
そう思えば
溌剌としていたおじさん
なかなか
やるじゃないか
とも思える
よろよろとでも
じぶんの足で
毎日歩こうとしているのなら
溌剌としたよろよろ
あいかわらず
がんばってるなァ
と
いうことに
なるのか
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