2013年5月6日月曜日

遠さがまた近づいてきていて





遠さが
また
近づいてきて
城跡が
涼しい夢の
高原のように
まぢか

齧りかけの
固焼きパンを
ちぎって口に入れながら
嗅ぎ直す
幼稚園時代の
最初の担任の先生の
つけていた香水

遠さが
また
近づいてきて
高原が
夢しい涼の
城跡のように
まぢか

殺したての
百合子の乳房を
ちぎって口に入れながら
嗅ぎ直す
内戦時代の
最初の父の娼婦通いの
残り香の数々

遠さが
また
近づいてきて
光源が
床椎亮の
血の跡のように
まぢか

直したての
憲法の新条文を
ちぎって千鳥が淵に捨てながら
嗅ぎ直す
昭和天皇の
御研究の成果を伝える
古いグラビア雑誌のにおい

遠さが
また
近づ井て忌て
城痕が
鈴しい嫁の
巧言のように
ま血か






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