混んだ山手線の中で
うしろの就活女子大生がモゾモゾ
しじゅうモゾモゾ
なにか探してバッグをモゾモゾ
就活心得帖をめくってはモゾモゾ
ファイルの表紙を大きく開いてはモゾモゾ
平気で肘を当ててくるし
バッグの端はこちらの背に刺さってくるし
(就活はきみには大変だろうけれど
(きみだけが大変なわけじゃないんだよ
(きみだけがヒロインじゃないんだよ
(さらに言えば
(きみはヒロインじゃないんだよ
新宿に着く
ゴーッと音でもしそうな勢いで
降り出ようとする人びと
就活女子大生はドア近くにいるのに
ガンと居座ってどこうともしない
サラリーマンたちが
彼女のファイルを叩き落さんばかりに
勢い込んでなだれ出ていく
なにをするの
とばかり
キッとふり返る就活女子大生
と見る間に
次のサラリーマンたちに押されて
姿勢を崩し
ホームに流されていく
この就活女子大生
こんな様子では
就活ばかりか
就職しても
どうやら前途多難
(スーツ姿の今のこの場所は
(すでにきみの職場のようなもの
(まわりの人たちを
(苛立たせないすべさえ
(きみの身にはついていない
だれか
教えてくれる人が
いるかな
ゲバラのあの言葉
〈この世には絶対に必要不可欠な人間などいない。
〈自分は必要だなどと思うな。
いないだろうかな
いないだろうな
激流下りをしていく
発砲スチロールよろしく
あっちで削られ
こっちで削られ
必要となどされていないのを
徹底的にわからされて
必要とされていなくても
いらないと言われても
嫌われうとまれても
とにかく
生きていくのだと
わかっていくだろうかな
しだいに
地球にとっての人類のように
宇宙にとっての人類のように
必要とされていなくても
いらないと言われても
嫌われうとまれても
とにかく
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