私もあなたがたに繋がっている。
ヨハネによる福音書15・4
某国ふたつの武官と
カクテルの夕べ
きみも
ザ・ネット
したら?
冗談めかした笑みを
浮かべながら
ひとりが聞いてくるので
(こんな笑みを
(彼が浮かべるのは
(ぜったいに
(こちらには渡さない
(技術などの話を
(わざと振ってくる時…
インターネットのこと?
今どき
だれでも
やっているじゃないか
そう言うと
あれはちがう
無料のだろ
きみが言っているのは
あれは
世界中の
情報をとるために
世界管理の側にある者たちが
わざと下ろした
撒き餌
あれじゃなくってさ
本当の通信網
きみの授受する情報は
相手以外には
まったく覗かれない
ガードの
本当にかたい
エラーもない
通信網
ほう…
けれど
ぼくにはいらないな
ぼくには
秘密はない
守るべき情報が
ぼくにはない
大事な情報をやりとりする相手も
この世にはいない
そもそも
ぼくは「世界管理の側」にない
どうせ
その気もなくて
冗談で言っているだけだろう
きみも?
すると
武官はさらに笑みを深め
きみの発言
いいね
「世界管理の側」にない
とはね
あたりまえさ
「管理」は存在しない
理性という自己欺瞞の妄想だ
管理は管理に溺れる
世界はあるがままにあれ
いまのままですべてはよい
すべて
無数のものの
あるがまま
なるがままにあれ
人間的価値観のすべてを脱ぎ去って
起こっているすべて
起こっていくすべてを肯定せよ
感情思念の根底に
自己優越と
他者への支配欲を握り締めつつ
虚妄を
「生」であるなどと
思い込んでいる
自称「人間」たちを除けば
世界への
これ以外の
態度はありえまい…
武官は
目をひそめた
…もう
きみはザ・ネットに
繋がっている
のか?
きみのいう
ザ・ネットとやらが
どんなものか
ぼくは知らないが
アン・ネットun-netというべき
非ネットから
離れたことはない
いかなる媒体も使わず
物理的な装置も接続手段もいらない
そもそも
感情作用と
価値づけ癖とを
脱ぎ捨てた者だけに
使用可能だが
神経も思考もいらない
人間の本体は脳にはないから
脳死状態でも
死後でも
問題なく使える
そこに
「世界管理」という概念は
介入しようがない
隠蔽はあらゆる部分で不可能であり
情報移動は
つねに瞬時にして
全方位
完全相互的で
自我を残す者は
過重なストレスのために
一瞬に焼き尽きる
そのような
アン・ネットにならば
ぼくは
永劫のむかしから
繋がっている
…
…
某国ふたつの武官と
カクテルの夕べ
というより
武官の姿をし
国
などというものが
あるかのようにもして
またも現われた
例の者たち
との
カクテルの夕べ
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