放っておいたペンの軸のむこう
海が広がってきている
この頃はどこの海もピンクだが
広がりつつあるこの海は
明るいグリーン地に
ところどころ
紫の斑紋が入っている
やがては
航海に出なければなるまい
一本足の巨犬ゴックを伴って
飼い犬ではなく
食肉用に手に入れたが
なついてしまって
山手線渋谷乗り換えの時など
まぁタイヘンなこと
タイヘンなこと
人が見知らぬ人を繁華街で撲殺するのが流行っている
流行らせたのは宮尾だ、
宮尾寛大、あいつ
しかし無責任な宮尾はどこに消えたか
捜査を任されているわけではないが
繁華街に出るたびに気になる
宮尾を思い出す
宮尾、宮尾、と目が求めてしまう
あいつ、繁華街にいるわけではないのに
どこか風光明美な孤島あたりで
のんびり船乗りのパイプでも
ふかしているんだろう
宮尾とむかし飲んだ
内戦下の廃墟寸前の都市のバーにも
海が広がってきていた
あのときはペンの軸のむこうではなく
わたしが殺した吉原芽衣子の
まだ温かい死体のむこう
吉原芽衣子もずいぶん巨体だったので(なにせ
身長が2メートル9センチあり
筋肉のしっかり張った肉ぶりのいい体)
彼女の巨体的愛に
堪えかねたわたしだったのだ…
しかし
むかしのこと
みんな
今はペンの軸のむこう
ここにひろがる海にむけての
航海を思うとき
そして
宮尾のことを
やはり
探し出すべきとき
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