2013年11月16日土曜日

こうしていられたのだから







サラ・ヴォーンを聴きながら
さらに
ボーンとする…

(ハハ…

だれもいない
夕刻すこし前のカフェ
贅沢にひとりで場所をとって
紙袋をそこのイスに
バックをこちらのイスに

アレカヤシがふたつ置かれて
揺れている葉
揺れていない葉
外の舗道を行く車や人を
隠すともなく
隠さぬともなく

別れなくても
よかったのかもなと
ちょっと
思い出す娘
別れようと言ったわけではなく
連絡をとり続けなかっただけだが
懐かしさもやっぱり
あるような
ないような

なんて
ぼんやりした
越し方かと思うけれど
時間が経てば
どうせ
なんでもぼんやりしていってしまう
九十八歳ぐらいの老人に
どの恋人がいちばんでしたかと
たずねてみても
古畑妙子じゃったな、やっぱり
―とは
答えないだろうと思うよ
そうじゃなぁ…と
きっと
黙ってしまう

だれもおらず
戸外の行き来がよく見えている
大気の大いさのような
よろこび
この数十分でいいのだと思う
このように
こうしていられたのだから
成功だと思う
ぼくの今回の人生                                  
   





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