眠くてたまらない日で
電車に乗っても
座るやいなや寝入ってしまった
…赤ん坊の泣く声がする
目を開ける
近くに乳母車があり
なにをぐずっているのか
大きな声で赤ん坊が…
…と思ったら
もう少し大きな子で
鼻筋も通っていて
顔の骨格もずいぶんはっきりしていて
しかし体は小さく
(ふつうじゃないんだな
(障害のある子なんだな
すぐにそうわかったが
なにをぐずっているのか
訴えるように泣き続けるので
小さなタオルでお母さんが
顔を拭ってやっている
だんだんと泣きやんだが
乳母車かと見えた車が
じつはもっと装備の整ったもので
競技用車イスのような車輪と
ハンドルには自転車なみのブレーキ
機能的な小バッグやポケットもついて
なにより子どもの前には
木板のテーブルがついている
こんな車が要るほどの
たいへんな障害なのかと思い
子どもの顔をまた覗くと
鼻筋も通っていて
顔の骨格もずいぶんはっきりしていて
なんだかさっきよりも
もっと大人っぽく見えた
お母さんには
どれだけ手がかかってたいへんだろうと
日々の世話を思って
すこしクラクラするように感じたが…
…今日のわたしは
どうかしてしまったのだろうか
いろいろなものがついた
この重装備の車イスを見ているうち
なんだかウキウキとしてきたのだ
こんなにいろいろなものが必要で
いろいろな世話が必要で
そうしてそれらがこんなふうに
この子のまわりに馳せ参じてきて
世界はなんと融通無碍な可変体であることか
それをこの子は証明しているじゃないか
面倒なことがあればその面倒に寄り添い
たいへんなことにもピッタリ寄り添い
世界はこんなにすがたかたちを臨機応変に変えて
集まってくるものたちが
また新たな道と組織をたえず作りなおし
次の時間へと拓いていく
そう思ううち
ありありと目が覚めてきて
世界と必要ともののできあがりと
幸と不幸と
さらにその先の幸との
つながりあいや撚れあいに
なおさらに覚めていく
目となって
ありあり
ありあり
ありあり
ありあり
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