2013年12月19日木曜日

フリーズドライコーヒーの下を潜って、湯は、


科学的に説明はつくだろうが、先日のインスタントコーヒー現象も奇異な現象に感じられる。カップ(1)にインスタントコーヒー(2)を入れ、熱湯を注いだ。少しヤカンを傾け過ぎたらしい。カップに落ちていく湯の速度が上がり過ぎ、カップの反対側を湯が駆けのぼって縁から上がり、多量ではないが外に零れた。カップを退けると、しかし、外に零れていたのは透明な湯だけで、これを拭った布巾はコーヒーの色に染まらなかった。カップの中のフリーズドライコーヒーの下を潜って、湯は、コーヒーを溶かす暇もないままにカップの外に零れたらしい。零れ出た透明な湯の跡や汚れていない布巾を見ながら、しばらく心は小さな動揺を続けた。少し脇に退けたカップにはフリーズドライコーヒーが溶けて、インスタントコーヒーに仕上がって湯気を立てている。こうなるわずか前の極小の時間の間を、透明の湯は駆け抜けてカップの外に逃れ、こうして跡を残し、布巾に浸透していったのだ。



(1)外径82ミリ、内径76ミリ、高さ70ミリの白いカップで、唇の接する上の部分に帯状4ミリ幅の濃紺の模様線が描かれている。パンのチェーン店〈リトルマーメイド〉橿原神宮前駅構内で19991226日に貰ったもの(3)

(2)MAXIM(味の素ゼネラルフーズ製)。インスタントコーヒーは好まないが、ドリップコーヒーを作る暇のない時に、急場しのぎで用いることがある。なお、ごく最近読んだネット記事には、ドリップコーヒーには発がん性がないが、缶コーヒーとインスタントコーヒーにはあるとわかったという話があった。

(3)この日、橿原オークホテルに朝に着いて荷物を置き、当麻寺と二上山に向けて出発する際に昼食用にパンを買ったが、ちょうど何かのキャンペーン中ということでこのコーヒーカップをプレゼントされた。故人となったエレーヌ・グルナックと一緒だった。前日には長谷寺と室生寺を訪ね、桜井駅前ビジネスホテルに投宿していた。荷物を増やしたくない二上山行の直前に貰ったこのコーヒーカップを私はしぶしぶリュックに捻じ込み、エレーヌに「こんな時に、こんなもの、要らないのに」と言った。当麻寺では奥の院で庭師と長く話した。二上山へは雌岳から上った。途中、気温が低下し、空もどんよりと雲に覆われたと見る間に霙となった。雪の吹きつける中の登山となり、何度も登った二上山の光景の中でも忘れがたい光景が続いた。雪嵐の中ながら、雄岳にも登って無事に下山した。夜は橿原神宮前駅構内の「利久」で夕食をとり、ローソンで買い物をし、ミスタードーナッツ(4)でコーヒーを飲んでホテルに戻った。


(4)この日、19991226日には、早朝にも桜井駅近くのミスタードーナツを利用し、そこで朝食をとったが、エレーヌと口論をした。やや不慣れな店員に対して彼女が厳し過ぎる言い方をしたので、それを少し諫めたのが発端だった。                                  
   







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