うとうとしているあいだに
何十年も前の
まだみんな若かった友人たちとの
議論やおしゃべりのテーブルに
戻ってしまっていた
あの頃も政治は危機的で
すぐにもこの国は
また戦前のようになってしまうと
ほうぼうで危惧され
時局通がわあわあ言っていた
遅れじとぼくらも
あの新聞この雑誌と熟読し
風呂のあとの火照る体から湯気を出し
深更までスクラップしたり
メモをとったり
そうして
わあわあ言うために
いつもの喫茶店に出かけては
他人の出した見通しを修正したり
あまり知られていない情報を出してみたり
わあわあ、わあわあと
雰囲気だけは残り
けっきょく「ねばならぬ」
「てはならぬ」論は
どうでもよかったようなもの
大挙して「おいしい生活」になだれ
だれもがバブルの狂騒に揺らめくのを
その後ぼくらはつぶさに眺めた
わあわあの後はべつのものが来ると
身にしみて知ったハルキお好みの時代に
わあわあ言うのは人に任せて
いまのぼくはデュシャンに学び直す
世界大戦中
モンテカルロでルーレットに興じ
チェスに没頭していた彼に
なんどか会ったマンディアルグさんも
戦中はモンテカルロにいて
なにをしていたんだか、いなかったんだか
レジシタンスなんぞ
どこ吹く風であったそうな
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