真夏の暑さとはちがって
さわやかながら
それでも
いっぱいに膨らんだ風船のような
朝からの
はつ夏の暑さ
午後には
温泉のそばにでもいるようで
からだじゅうを
ぴっちり
はつ夏の暖気で包まれている
こんな空気に
いったい何十日
何百日
包まれて
エレーヌと過ごしたかとふと思い
どの時間も
瞬間も
まったく失われてなどいないのを感じ直し
過去だの
終わっただの
そんな思いかたの深い過ちを
また反省させられる
きのう繁華な街かどで
白人の美しい見知らぬ娘とすれちがい
やわらかな金髪の揺らぎや
遠い湖のような青い目が
いままさに若さを生きているのを
きらきらと受け止めるようだったが
見知らぬ娘よ
あなたのいまをすでに
すべてわたしは生きてしまって
そうして
驚いてはいけない
いまでもすべてを生き続けていて
すべてはいつまでも現在で
時間というものがじつはないのだとも
わかっていて…
だから
わたしには昔がたりはできない
過去をしか語れない物語や
小説などのかたちが
どうしてわたしの性に合わないのか
それは
わたしが時間の外にいるから
すべてがいまも
おそらく明日も生きていて
なにもかもが進行し続けていて
距離をとることでしか成り立たない
語りというものを
わたしが行い切ることができないでいるから
詩神よ
なにも失われず
終焉せず
いつまでも継続し続けると知って
時間の外に居続けるものたちの
唯一の拠りどころよ
あなたに
ふたたび拝礼奉る…
0 件のコメント:
コメントを投稿