奥入瀬渓流に沿って
長くながく歩いて行ったが
つねに渓流の流れを見ながら
森のみどりの中を歩き続けるうち
記憶のことを思っていた
渓流を見続けながら
何時間も歩いたこんな記憶は
はたして無数の静止画によるのか
それとも脳のどこかに
動画として蓄えられるのか
帰ってきてから
しりあいの心理学者に聞くと
心理学では
記憶は静止画の蓄積と考えるそうな
とはいえ
記憶を静止画で捉える発想など
根拠も希薄なのだから
なんだか
あやしいものだなと感じる
あやしい
あやしいよ
むしろ
あらゆる記憶は
音入り感触入りの精細な動画で
とほうもなく緻密なものではないかと
いくらか期待を込めて
夢想してみる
静止画の記憶部分があるにしても
完全な静止画ではなくて
おおいにブレのある
やわらかな可動域のある画ではないのか
そんなことを思いながら
奥入瀬渓流の長い歩行を思い出すと
やっぱり記憶は
ぶよぶよした
にゅるっと伸び縮みする
やわらかな可動感知映像球体のように
感じられる
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