2014年5月30日金曜日

やわらかな可動感知映像球体



奥入瀬渓流に沿って
長くながく歩いて行ったが
つねに渓流の流れを見ながら
森のみどりの中を歩き続けるうち
記憶のことを思っていた

渓流を見続けながら
何時間も歩いたこんな記憶は
はたして無数の静止画によるのか
それとも脳のどこかに
動画として蓄えられるのか

帰ってきてから
しりあいの心理学者に聞くと
心理学では
記憶は静止画の蓄積と考えるそうな

とはいえ
記憶を静止画で捉える発想など
根拠も希薄なのだから
なんだか
あやしいものだなと感じる
あやしい
あやしいよ

むしろ
あらゆる記憶は
音入り感触入りの精細な動画で
とほうもなく緻密なものではないかと
いくらか期待を込めて
夢想してみる
静止画の記憶部分があるにしても
完全な静止画ではなくて
おおいにブレのある
やわらかな可動域のある画ではないのか

そんなことを思いながら
奥入瀬渓流の長い歩行を思い出すと
やっぱり記憶は
ぶよぶよした
にゅるっと伸び縮みする
やわらかな可動感知映像球体のように
感じられる





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