長い短さを手繰り続け
海の近い溝に行きあたって
それでも涼しい風が
いくらか抜ける
道路標識の下
なんの鳥かが
上空から落としたのか
小さなカワハギが
のっぺり
ぺったり
埃を薄くかぶって
落ちている
夏が来るのだ
まだ来る
使いかけのノートを
バッグから取り出したものの
新しいページを開かずに
また閉じてしまう
書きつけてもいいことはあるが
書きつけるべきことはなく
ヒトデを取りに
海に出るほうが先だと思う
捨ててきた家の下駄箱の上に
ひとつ
乾いたヒトデを置いてきた
あれを海水につけて
戻してやりたいと思うが
それはまた
いつか
そのうち
しめっぽい
大言壮語を続けている
都会人たちのあいだを抜けて
からからに乾いた
白い小さなあの廃墟を
取りに戻る
きっと
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