過ごしやすくなった夕暮れの
朝顔の蔭で
歯磨きする動物
髪をとかす植物
あくびする細菌
かれらをびっくりさせないように
晩餐のための
同国人を一体屠殺しています
首の動脈を切って血抜きするのがふつうですが
ふと肝臓を刃で貫きたくなる時があって
今日はそうしています
腎臓も貫いてみています
苦しんでいますね
でも
どんなに苦しんだところで数十分で死ぬのですし
わざと生きながらえさせたところで
三時間後の晩餐までには息絶えるのです
息絶えるどころか
体のかたちも留めぬぶつ切りの肉塊となって
ずいぶん熱いソースの中や
鉄板の上で湯気を立てたりしているはずです
いちばん倫理的な肉食は
なんといっても身内や同郷人や同国人を食することです
それに気づいたのは
かれこれ三〇年ほど前のことでしたか
すぐにそうし始めたわけではなく
しばらくは他の動物や異国人を食べ続けていたのでしたが
この数年来は同国人を食材とするのに切り替えました
ずいぶん褒められるべき聖なる行為ではないか
そう自画自賛しております
同種の枠組みの中だけで食を解決するのは
宇宙的に画期的なことだと
神のお褒めに与れるものと確信しております
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