2014年6月26日木曜日

神のお褒めに



過ごしやすくなった夕暮れの
朝顔の蔭で
歯磨きする動物
髪をとかす植物
あくびする細菌

かれらをびっくりさせないように
晩餐のための
同国人を一体屠殺しています
首の動脈を切って血抜きするのがふつうですが
ふと肝臓を刃で貫きたくなる時があって
今日はそうしています
腎臓も貫いてみています

苦しんでいますね

でも
どんなに苦しんだところで数十分で死ぬのですし
わざと生きながらえさせたところで
三時間後の晩餐までには息絶えるのです
息絶えるどころか
体のかたちも留めぬぶつ切りの肉塊となって
ずいぶん熱いソースの中や
鉄板の上で湯気を立てたりしているはずです

いちばん倫理的な肉食は
なんといっても身内や同郷人や同国人を食することです
それに気づいたのは
かれこれ三〇年ほど前のことでしたか
すぐにそうし始めたわけではなく
しばらくは他の動物や異国人を食べ続けていたのでしたが
この数年来は同国人を食材とするのに切り替えました
ずいぶん褒められるべき聖なる行為ではないか
そう自画自賛しております
同種の枠組みの中だけで食を解決するのは
宇宙的に画期的なことだと
神のお褒めに与れるものと確信しております





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