はつ夏になると
うつくしい蛾もいっぱい出てきて
寄るのも楽しくなる
誘蛾灯のあたり
大きく
あんなにはっきりと
色の妙
思いきった姿
あんな造形の粋が
わざわざ生きものとなって
同じ空気のなかを
飛んできてくれる喜び
誘蛾灯の罠にかかり
あわれもう一歩で
失われようとするいのちの
あの揺曳
あれを見たくて
誘われゆくよわたくしも
あゝ誘蛾灯の
酷ないざないよ
いのち果てたのちの
うつくしい羽根の浮ぶ水面
すこし屍油の浮いた
貴いおぞましさよ
あんな立派に羽根を張り
あんなに美しかったいのちたちの
毛羽立った屍の
安手の明かりのもとの醜さよ
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