2014年9月14日日曜日

稀な材質の透視図を思い描くために




ふいの日の翳りに
多くを思い出させられたようだが
また射してきた陽に
蒸発していってしまった
どれも

沼に行こうか
ここも
沼だというのに…

あのあたり
疎林をいくつも経れば
小山と森があって
さびしいというより
変身を強いられるような気の中を
ずんずん
ずんずん
また行くつもりなのか

今日はやめておこう
いないはずの
妹の思い出がぷちぷち
またあぶくを
立てているから
そうしてまた
不用意に
などと
呼んで済ましがちな
液体様のもののありかに
感知されづらい
波が立っているから

扇を手慰みに
開いてみたい気がするが
十分に古い扇が
今は手もとにない
眼の醒めるような赤や朱や
天にも昇るような軽い黄緑が
間近にほしいが
怒涛の過ぎた少し後の
時の果てのように深く暗い海面を
かわりに想像しておこう

いつも鞄に入れてある
ターコイズのビニールファイルから
一枚
あきらかに死のコピーと思われる紙を取り出して
陽光のわずかの煌めきと
続いてくる弱まりとに晒し
ひそやかな占いめいた作業をしよう
この沼の干上がりが囁かれて久しいが
そんなこととは違う
まだ言葉にしたこともない
とても優しいものの
優しさの微妙な階梯について
直視でもすれば直ちにとろけ落ちかねない
稀な材質の透視図を思い描くために




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