孤独に死んで
しばらくは気づかれず
じわじわ
腐っていったのらしい
後の部屋に入り
掃除をし
遺品を整理し
処分する
業者の仕事ぶりを見たが
なかなか
丁寧な仕事ぶり
人づき合いの少ない
学のある老人だったらしく
日々の日記には
世間のニュースも点描され
字はきれいで
書棚にはきちんと
本が重ねられていた
必要最小限という感じの家財も
適切な間隔で置かれていて
よけいなものがなく
かといって
寒々しい雰囲気でもなかった
孤独死
という言葉に
ちょっぴり身がまえ
どんなわびしい光景か
寒々しく
禍々しい部屋かと
見続けていたが
部屋でひとり最期を迎え
死んでいった老人の
最期までのきれいな生きぶりに感心し
みごとなものだと
敬意さえ持った
ひとりでの死は
この人にとっては
さびしくもなく
悔やまれることでもなかっただろう
見つかるのが遅れ
すこし腐ってしまったとしても
それぐらいが
なんだというのか
ひとり静かに生き抜いてきて
誰にも迷惑をかけず
騒ぎたてず
うるさく纏いつかない生だったのだから
軀という
唯一の所有物が腐って
ちょっとぐらい
汚してしまったところなど
洗ってやったらいいではないか
まだ生きている
軀たちが
まだ腐っていない
軀を
動かして
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