2015年4月26日日曜日

ごく数人にむけて




自我を見せつけてくる言葉たちがうるさいのでなく
自我と呼ぶべき自我がそこにほとんどないことがうるさい

自我があるふりをすることばかりに人はいそがしく
そんなふりをしているあいだに自我はさらに縮む

生まれる前にどこにいてどうしていたか語れない人に
自我などというものも努めて守るべきものもない

だから記憶の喪失も意識の崩壊も死も恐れるに足らない
人に人とみなされる人であるということは何者でもなかった証だか

肉体を養うだけのための細い関わりだけを人界とは残し
精神と霊はそろそろ完全に人界を去ってしまう頃合

とりわけ言葉と思念と感覚とを用いずにすべてを解し
反応は無反応の極みのようにし動きは全き不動とするように

音の外に別種の音を自分の耳でない耳で聞いて導きを受け
ものの無さのほうへつねに寄り無さをこそ身体とするように




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