2015年6月21日日曜日

Aurea mediocritas*



どういう風の吹きまわしだか
ある監視会社との繋がりができて
施設や駅の管理をしている知り合いが何人もできた

―何月何日あそこの通路を通りましたよ…
―あの日の早朝そのホテルのレセプションで…
―OO時OO分の特急だったのであのホームを…

などとその人たちと話しながら
「どんなふうにぼくは映っているんだろう」と
ちょっとしたネタ程度のつもりで持ち出してみたら
ご丁寧にみんながビデオを調べてくれて
ご丁寧にもぼくの姿かたちが
どれにもまったく映っていなかったのが
わかってしまった

ひとつだけ
青いような緑のようなひかりの影が
スッと通過したビデオがあったが
それがぼくだったかどうか
もちろん確証はない
たとえその時間その場所に
ぼくだけが居たはずだったのだとしても
そのひかりの影が
ぼくを覆い隠しに現われたのだったかもしれないのだから


*ホラチウスHorace『オードOdes』Ⅱ、10、5.





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