2015年6月16日火曜日

蛾にかわって



寝床に就いたものの
まだ眠らず
小さなライトをつけ
本を見ていると

気づいたのは
小さな
小さな蛾
布団のそばにいた

五ミリか
六ミリほどか
小さくて
脚も
毛のようで
触覚も
綿毛のようで
こんなのが
よく生きているもんだと
見続ける

歩きまわるわけでもなく
立ち止ったまゝ
からだを微動させ
震えている
ときどき
からだを前に運ぶが
止まっては
痛みに堪えるように
また揺れ
震えている

こういうのが
常態なのか
こういう
生き方なのか
気分でも悪いんじゃないか
と気にかかるが
抓んだら
抓んだだけでつぶれそうだし
抓んだって
治せるわけでもないから
そのまゝ
震えているのを見ているが
なんだか
楽ではない生き方のよう
苦しみや
不快さを宥めながらの
ぎりぎりの
生きぐあいのよう

ティッシュに
なんとか
這わせ
乗せてやって
窓を開けて
戸外に
ホイと投げてやったが
寝床に就き直してからも
大丈夫だろか
あいつ…
と気にかかる

蛾も
楽じゃァないようだ
このことは
蛾にかわって
ちょっとは
いや
なんとしてでも
世界に
言い広めてやりたいもんだ





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