2015年6月16日火曜日

ひっそり閑としてしまうような



杉村春子みたいな
オバサンの法学のセンセと
もうちょっと若い
でもやっぱり十分にオバサンな法学のセンセが
お弁当を使いながら
近ごろの政権について話している

それを
センセなんかやるより
金魚屋かアイスクリーム屋でもやるほうが
似合ってるなァという感じの
やっぱり法学のオジサンのセンセが
聞いている

―憲法学者をバカにしてるわよねェ
―なんでもできるって思ってるのかしら?
―ちょっとコワいわよねェ
―お歳だったナニナニ先生なんか生きてらしたらタイヘンねェ
―そうよ、暗殺だっていうわよねェ
―ほォ
―なんでもかんでも「暗殺!」ってねェ
―それにすぐ「革命だ!」ってねェ
―ほォ
―言ってらしたものねェ
―言ってらしたものねェ
―過激なのよねェ
―過激だったわよねェ
―そうですかァ

こんなやりとりを
わきで聞いていると
ずいぶん
ノンキなもので
いつのまにか
小津安二郎の映画のなかに
こっちまで
入り込んでしまっているような

小津の時代だって
政権は
とんでもなかったんだが
映画のなかでは
あのとおり
ノンキなような
しっとりしたような

お昼御飯に
蠅よけの
網がかけてあるような
(そして
(だれも家の中に
(いないような

となり近所で
犬が
ひとしきり鳴いて
黙った後は
ひっそり閑としてしまう
ような




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