なにもすることがないどころか
するべきことなんていっぱい
なのにスイッチを切ってしまって
疲れ切ってしまっているのでもなくて
落ち込んでいるのでもなくて
茫然としてしまっているのでもなくて
冬の日曜の夕暮れ
ふと気づくとやけに外が静かで
やけに内も静かで
薄暗いまゝのサロンで椅子に座って
明かりも点けず
カーテンも開けたまゝで
薄闇の音というのかな
夕闇の肌ざわりとでもいうのかな
そんな中に居続けて
まるで温泉に浸ってでもいるように
芯からゆったりしている
芯というのはどうやら
心なんかよりも奥にあるようだと
気づくのはこんな時
それこそ本当の自分だとまでは言わないよ
言ったらそれはそれで
精神商売の宣伝文句みたいになる
言いたくなっても
言わないで留まることで
もっと本当らしく自分に向けて言える時って
あるじゃないか
やるべきいっぱいのことが
まったく自分にむけてのことじゃなくって
自分から自分を遠ざからせることばっかりで
そんなことをやらないでいる時に
あゝこれこそやるべきことだったなと
気づくような冬の夕暮れ
ひとりで居て椅子に座っている
明かりも点けず
寂しくもなく
不安もなく
いっぱいに心充ちて
座っている
たぶん立っていても
寝転がっていてもいい
たまたま座っている
そのたまたまの中に
努力しても
一生かけても手に入らないものが
あまりに当たり前に在る
得難いものでなどない
なんでもないものとして
逃げ去る気配など少しもなしに
ある
0 件のコメント:
コメントを投稿