2016年4月8日金曜日

いつものんびりとスミレ色の夢を


小野十三郎は
母の友だちのお父さんだったが
教科書で読んだ桜の歌は
なかなか
のんびりと哀切で
とてもよかった

むかしは
いろいろなところで
目にしたが
山村暮鳥なんかも
言い過ぎず
とてもよかった

他には
田中冬ニとか
丸山薫
黒田三郎や
千家元磨
八木重吉だとか
とりわけ
津村信夫など大好きで
時代や政治を
あまりじかに書かないのが
みな
よかった

立原道造も
ずいぶん
ノンキなもんだとも
思うが
詩というのは
あゝあって
もらいたいと思う

人が忙しい時に
ごろニャンとしている
猫みたいに
だれか
いつものんびりと
スミレ色の夢を
見ているような人が
詩人として
いて
ほしい

《私たちの 心は あたたかだつた
《山は 優しく 陽に照らされてゐた
《希望と夢と 小鳥と花と 私たちの友だちだつた*

こんな
よっぽど老いさらばえて
もうどうでも
なってしまえという歳でないと
なかなか
恥ずかしくて
書けないような行句を
よくまァ
二十ちょっとで
書き残したものだと
ほのぼの
感心してしまう



*立原道造『草に寝て…』




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