滝のちかくなのに
滝の音がしないレストランは閑散として
スープをゆっくり飲む
わたくしの
スプーンの音しかしない
もちろんそれも
小さくて
綿に小粒のダイヤを落し続けるような
よく
宇宙のむこうで聞こえるような
現実につながる前の
概念のような
音
まだ
生き切っていない部分が
わたくしの遠い地方に点在していて
旅は
続けざるをえない
疎林の音
森の音
それらに沿いながら
添われながら
しかし
おおかたの幻像は
もう
髪の毛の先の氷の城に
すっかり凍結させてしまいながら
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