2016年8月6日土曜日

崩折れていく


ヘンなことを思いついて
実際にやってみた

仕事や用事で
年がら年中行き来する区間や
通りから通り
街から街を
仕事や用事のたまたまポカッと空いた時に
まるで
かつての馴染みの土地に舞い戻って来た亡霊のように
行き来してみた
実際にやってみた

通りも街も駅も
電車やバスも
ありありと総天然色で見える
見えるけれど
ニ重写しのようにモノクロでもありセピア色でもあり
なんという懐かしさだろう
あゝ、あの道のあそこにはちょっと凹みがあって
あゝ、この大通りのむこうからは東京タワーがちょっと見えて
あゝ、この公園のキョウチクトウの繁みには猫がいつも数匹いて
などと思いの底から
ニ重にも三重にも思い出されて来るようだった

ほんとうに死んでしまったのじゃないか?
じぶんは?

まだ生きているつもりだから
余裕を心に湛えながら
そんなことを思ってみたのだが

もちろん
死んでしまったんだ
じぶんは

おとといのじぶんに死なれ
きのうのじぶんに死なれ
さっきのじぶんに死なれ

そうして今
たまたまいつもの仕事や用事から離れて
いつも仕事や用事で行き来する場所をまわってみながら
こんなにも壮絶に懐かしくて

崩折れていく



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