世界でもいちばん
交通量の多い交差点のむこうから
あんな無頓着に
手を振ってきた彼女も
夕暮れ少し前の
午後の
地中海の浜辺を走り寄ってきた彼女も
寒い国の地方都市の
いつもの輸入食品雑貨店の
スパイス棚の前で
偶然出くわした彼女も
サン=マルコ広場の
広場のカフェのテラスで
つばの広い透けた白い帽子をかぶって
とびきり上等の
ロゼのシャンパーニュを飲みながら
待ってくれていた彼女も
わたくし
自身
でしかなかったのだろう
指の開きぐあいの
ひとつ
かすかな
瞳の
そよぎ
うなじの
ほつれ毛の
一本一本
どれ
ひとつ
なくなっていかないから
いつまでも
今になっても
0 件のコメント:
コメントを投稿