人が此処に来ることはない
少し離れたところまで
薄い闇が寄せて来ているものの
それも
此処までは来ない
それだけで
なんという温かさだろう
話すこともなくなった
おしゃべり人形が
きちんと壁際に立っている
むかし娘と姉を
ともに持っていた頃の
なごり…
と紀田村さんは言っていた
(紀田村さんの墓は
(蛍田の畔道の
(脇に一基だけで
(立っている
私のものではない
紀田村さんの娘さんと
姉さんの
ふたりの声が
きっと人形の喉を詰まらせて
沈黙を強いでも
しているのか
私以外の外のものは
なにもかも
寂しい
寒い宇宙に
まだまだ実っていく
果実も
ある
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