原詩を読んだ人はだれでもわかるが
ボードレールの詩句はやわらかい
使う言葉の角がとれていて
日本語でいうならぜんぶ
ひらがなで書かれている感じ
鈴木信太郎の訳はかっこいいし
堀口大學の訳もいいが
ボードレールの原詩はあんなに
漢字漢字して厳めしくはないし
まろやかでどの語にも潤いがある
ユゴーの原詩などよほど棘々しているし
ラマルティーヌはよほど乾いている
ボードレールの原詩を読み込むかどうか
これはその後の言葉づかいを変えてしまう
あんなにまろやかにスムーズに
るるるると詩句をくり出すのを見ると
筋ばったり厳めしがったりして
偉そうに書くのは恥ずかしくなる
しかもカジュアルというのではなく
ましてやジャージ姿には程遠い恰好で
良質の皺にならない生地のスーツで
やわらかくしなやかに動きまわるようで
じつは内容などよりその言葉ぶりにこそ
ボードレールの魅力はあると思える
ランボーもじつはやわらかいし
ヴェルレーヌももちろんあのとおり
訳せば難解のかたまりのような
あのマラルメも声にのせて読んでみれば
まろやかな音楽、そして時に嵐、雷鳴
ラフォルグなどはよほどカサカサ
ひとりよがりの象徴や抽象だらけで
副詞の粗雑な使いようのヴァレリーも
音だけは師のマラルメゆずり
ちょっと大衆化したメロディーだが
さすがに本格路線を
守り抜こうとはしている
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