2017年5月28日日曜日

体を四季そのものとし切って



是のただよへる国…
『古事記』

この国小国にて人の心ばせ愚かなるによりて、
もろもろの事を昔に違へじとするにてこそ侍れ。
鴨長明『無名抄』

たゞ過ぎに過ぐる物。
帆をあげたる舟、人の齢、春夏秋冬。
清少納言『枕草子』
  

定かなものはなにもないから
平成の平家の興亡にも
特に驚きはない
源氏が討伐に来たところで
北条がすぐに乗っ取り
その後はまた
ぐずぐずになっていくだろう
此処はそういう小国で
数千年やそこらで
この性向は変わるものではない
古事記に記された神々も
現実に湯戻しして読んでみれば
田舎集落どうしの泥臭い
縄張り争いに過ぎず
直視する目には
情けない醜さと卑しさの
貌と体つきの取組みあいの連続
あゝあほらしい群島
せいぜい数十年の地上滞在なら
体を四季そのものとし切って
散る花びらのように
夏草の夢跡のように
芒の枯れ穂のように
時雨を受ける森のように
たゞ過ぎに過ぎていくだけで
よいものを



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