個性のない人に会いたい
それなりの考えも
感じ方も
きっと持ってはいるだろうけれど
そんなもの
十人並みだと自分ではわかっていて
たいていのことは
あれもこれも
どうしたらいいか自信も持てず
先々の見通しなど
立てられるわけもなくて
けれど
逃げたって
逃げた先が安全でないことぐらい
もう十分わかっているので
いまさら逃げ腰にもならない
個性のない人に会いたい
いちばん目立たないマネキンのような
明るみでも暗がりでも
おなじ口もと
どこも見ていなくて
でも
さびしくはなくて
個性のない人に会いたい
当たりさわりのない
軽いそよ風のような話題の
流れるまゝ
いつも別れの時間に
なってくれているような
個性のない人に会いたい
香水をつけていたっていい
好きな食べ物があってもいい
でもしばらく会わないでいると
香りも食べ物のことも
まったく
思い出せなくなってしまう
個性のない人に会いたい
なんにも話す必要がない人
なにをしていても
していなくても
飽きるということがなくて
会う必要さえない人
けれど
高原の青い空の下
白樺の林の
しっとりした
空気の肌を
いつも
持っている人
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