2018年3月6日火曜日

和王



(…みんむけむ ほっむ*

寒い手
炉に色富む穂に

懐かしい
無我
なおキムさんから手紙は来続け

和王
轆轤を送り遣わす
船に同乗して
懐かし
忘れたペンを河端に借りようとする時

誰のイヤホンから
洩れた
バッハか
ブランデンブルグ協奏曲の第四番第二楽章
さびしさいっぱいの華やぎ
撥ねて
飛んで
急ぎに急ぎ

もう煙草をふかして待ってくれている人のいない
にせんじゅうはち年

…梅、見たねぇ
…桜、見に行こうねぇ

さっき

 (…ひしめれてむ 
(…いしめれてんぬ
(…りほる うぃ
(…ぜびみひしてぃる わむ**

明!
命!
May!

(…みんむけむ ほっむ***

内面を見尽していない人らの群れにちょっと流されていってみる

数十年かかったが内面をわたしは昨夜ついに見尽した
イメージにはできない空洞が見尽しの其処にはある
さびしいありようではなく
わたしを巡るあらゆるものの中心とすべき空洞であった

ない

なにもない

その“なさ”にわたしは安らいだ
わたしは“なさ”であった

「この世においては、物質的現象には実体がないのであり、
「実体がないからこそ、物質的現象で(あり得るので)ある****

「同じように、感覚も、表象も、意志も、知識も、すべて実体がない*****

このような記憶が響いてきたが
思い出すまでもない
細胞のひとつひとつにまで染みている知だから

知と和は似ている字

トモカズ君?
チワちゃん?

きみたちは
昔のまゝのお寺の幼稚園の銀杏の大木の下で
新しいおもちゃを持って戻ってくる
わたしを待っている





*駿河昌樹 『らびてへむ みそりか』 in 詩誌《ぽ》3433THE MAIL3502
**ibid.
***ibid.
****『般若心経・金剛般若心経』(中村元・紀野一義訳注、岩波文庫)p.11
*****ibid.



0 件のコメント:

コメントを投稿