2018年3月14日水曜日

Galette Chocolat

あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
                                                小野茂樹 『羊雲離散』


貰ったのはGalette Chocolat
馬車道に本店のあるガトー・ド・ボワイヤージュの
たった五つ入りの箱の
かるいプレゼントぶりがむしろ嬉しく
お忍びで裏道から裏道へと伝い
みなとみらいや宮下公園に暮れた
たくさんの夕べから夜
そして朝が
むかしの宴のクラッカーの華やぎのようにどっと押し寄せ
極薄のガラス細工のように透明に散っていった
どの顔もどの顔もどの顔も
やっぱりたった一つの顔だったかもしれない
見つめられていた!
見つめていた!
あんなにもかたく腕を結びあい
たった一時の顔の
稀な透けるようなきらめきを 
たぶん 来世のわれらを構成する細胞の隅々にまで充満させて




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