ただの絵である
しかも印刷されている
小さな女の子が
丸い麦わら帽のようなものをかぶって
お母さんに手をつながれている
いい天気の日らしい
公園の林を抜けて来ようとしている
口をまるく開けているようだが
はっきり描かれてはいない
値が張るわけでもないカフェのテーブルに
テーブルクロスのかわりに敷かれている紙のシート
そこに印刷されている絵
克明に描写した絵ではなく
ほのぼの感を狙ってか
ぼんやりしたタッチで描かれている
コーヒーが来るまでのあいだ
絵の女の子を見ている
世の中のわずらわしさも
どうにもならないことの多さも
実現しないままの夢の数々も
まだなにも知らない頃だろうか
まるく開いた口のぽっかりぐあいに
こころを惹かれてしまった
気持ちも口のように
まるくぽっかり開いて
まわりのすべてを吸おうとしている
そんな頃だろうか
そう思いながら見ると
気持ちのいい絵だと感じる
カフェの窓外の車や人の流れも見るが
また絵に目を戻す
気持ちのいい絵だと思う
まるでこちらにも
未来というものがあるかのように
感じさせてくれる
窓外の空の青を真っ赤な球体が横切ったように感じたが
だれか風船でも離してしまったのだろうか
コーヒーはまだ来ない
バリスタっぽくしている青年が
よほど頑張って
淹れてくれているのか
また
絵の女の子を見る
まるく開いた口のぽっかりぐあいが
やはり
とてもうれしい
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