2018年4月10日火曜日

まるく開いた口のぽっかりぐあいが

   
ただの絵である
しかも印刷されている

小さな女の子が
丸い麦わら帽のようなものをかぶって
お母さんに手をつながれている
いい天気の日らしい
公園の林を抜けて来ようとしている
口をまるく開けているようだが
はっきり描かれてはいない

値が張るわけでもないカフェのテーブルに
テーブルクロスのかわりに敷かれている紙のシート
そこに印刷されている絵
克明に描写した絵ではなく
ほのぼの感を狙ってか
ぼんやりしたタッチで描かれている

コーヒーが来るまでのあいだ
絵の女の子を見ている

世の中のわずらわしさも
どうにもならないことの多さも
実現しないままの夢の数々も
まだなにも知らない頃だろうか
まるく開いた口のぽっかりぐあいに
こころを惹かれてしまった

気持ちも口のように
まるくぽっかり開いて
まわりのすべてを吸おうとしている
そんな頃だろうか

そう思いながら見ると
気持ちのいい絵だと感じる

カフェの窓外の車や人の流れも見るが
また絵に目を戻す
気持ちのいい絵だと思う
まるでこちらにも
未来というものがあるかのように
感じさせてくれる

窓外の空の青を真っ赤な球体が横切ったように感じたが
だれか風船でも離してしまったのだろうか

コーヒーはまだ来ない

バリスタっぽくしている青年が
よほど頑張って
淹れてくれているのか

また
絵の女の子を見る
まるく開いた口のぽっかりぐあいが
やはり
とてもうれしい



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