2018年6月14日木曜日

アスファルト愛

 
暑い日が続いて、ふと、
なにか大きなものがヒュッと終わるかのように、
涼しくなったある日のこと、
わたしはアスファルトに恋をした。

けれども、心臓のドキドキを直視したりはしないで、
あゝ、これが、
アスファルト愛、ってやつね、
と、ちゃんと冷静に対処。

S895星雲で流行っている、とかなんとか、
言われていたあれだな、
いつのまにか、銀河系の太陽系にまで、
感染がひろまってきたんだな…

そう思って、
これ、重病になる前に治さないといけないなぁ、
と、ちゃんと冷静に考えをめぐらした。

めぐらしたことは、
めぐらした、
んだ、
けど、
薬があるわけでもないし、
寝ていれば治るのかどうか、わからないし、
なにかの栄養が足りればいいのかどうか、
それもわからないしで、
ちゃんと冷静に対処しようにも、
そこで止まってしまった。

ま、地球での知などというものは、
こんな程度。

アスファルト愛は、さいわい、
ひどく、ぐんぐん昂進するわけでもなく、
けっこう穏やかに、ほわぁ~っと膨らんでいく感じで、
外に出るたび、どこのアスファルトを見ても、
ああああああああああああああああ…
と、見とれてしまう程度に止まってくれていて、
人目を気にしないといけない地上では、
どうにかこうにか、制御できる感じ。

じつは、アスファルトには、
ふたつとして同じ顔貌の部分はないと気づき、
なんと唯一無二なのォ!、おおおお!
などと、いつも心は高鳴り、
人がおらず、車も来ないところでは、
地面に腹ばいになって、
アスファルトに頬ずりを、よく、するようになった。
道路の真ん中に寝転がって、
大の字になっているのも大好きで、
世界中の大都市の、あの夜明け前の静かな時間、
だいたいの幹線道路では、もう、寝転び済み。

この程度の症状で済んでいるんだから、
たいしたこともない、と安心しているけれど、
ほんとうに、
これがいつか昂じてしまって、
あちこちのアスファルトを剥がして収集したくなってしまったら、
どうしようかなぁ、と
ほんのちょっと、
心配。



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