ゆうがたはなにもしないで
町のようすを眺める
ちかくを見下ろし
とおくを望む
座ったり
立ったり
また座ったりする
コーヒーも
お茶も飲むが
飲むのは水がいちばんいい
コップに注いで
ゆっくり飲む
そうして
また
立ったり
座ったり
町のようすを眺める
気持ちのよい
娯楽のための本を
ちょっと読んでみたりもする
ヘーゲルやカントがいちばんいい
スピノザも気持ちがいい
小説ならなにがいいだろう
ちょっと迷う
生活思念や感情を
あまりにくだくだ書いてあるものは
すぐに嫌になってしまう
ヘミングウェイのいくつかはいい
「嘔吐」にもよい箇所がある
鴎外はかなりよい
ソレルスやバルザックにも
よい箇所がある
物語が停滞するあたりで
記述は急に夕方の読書むきになる
いずれにしろ
ぼんやりと目を落とす
くつろぎの読書
意味とイメージの無数の糸は
現われては縺れ
すぐに姿を消しては
また現われ
間違いも多い印象を心に残しながら
新たな空間を
意識の未来へとひそかに準備していく
座ったり
立ったり
また座ったりする
ちかくを見下ろし
とおくを望む
ゆうがたはなにもしないで
町のようすを眺める
0 件のコメント:
コメントを投稿