2018年6月2日土曜日

ゆうがたはなにもしないで



ゆうがたはなにもしないで
町のようすを眺める

ちかくを見下ろし
とおくを望む
座ったり
立ったり
また座ったりする

コーヒーも
お茶も飲むが
飲むのは水がいちばんいい
コップに注いで
ゆっくり飲む

そうして
また
立ったり
座ったり
町のようすを眺める

気持ちのよい
娯楽のための本を
ちょっと読んでみたりもする
ヘーゲルやカントがいちばんいい
スピノザも気持ちがいい

小説ならなにがいいだろう
ちょっと迷う
生活思念や感情を
あまりにくだくだ書いてあるものは
すぐに嫌になってしまう
ヘミングウェイのいくつかはいい
「嘔吐」にもよい箇所がある
鴎外はかなりよい
ソレルスやバルザックにも
よい箇所がある
物語が停滞するあたりで
記述は急に夕方の読書むきになる

いずれにしろ
ぼんやりと目を落とす
くつろぎの読書
意味とイメージの無数の糸は
現われては縺れ
すぐに姿を消しては
また現われ
間違いも多い印象を心に残しながら
新たな空間を
意識の未来へとひそかに準備していく

座ったり
立ったり
また座ったりする

ちかくを見下ろし
とおくを望む

ゆうがたはなにもしないで
町のようすを眺める



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