2018年7月31日火曜日

報告



長いプロジェクトだったが、結論は出たといってよいと思われる。
簡潔な報告を送る。

地球上の言語を、特定の論理や文体に最も縛られないかたちで使用できる環境に投げ込んだ場合、思念や記憶や感情ばかりでなく、文字情報やその他のリプリゼンテーション情報をも含む外部情報をも巻き込んで新たな世界を創造できるかという当初からの探究課題については、イエスと答えることができる。二十世紀初めから大規模に用いられるようになった自由詩形体は、使用上の自由さの点で未だに不完全ながら、この課題には適合しており、今後も一層の実験が為されていく価値があろうと思われる。
そればかりか、筆記者の意思を支え導く多層的な無意識への掘削探索作業までが可能であることも、多量にくり返された実験により、証明されたと言ってよい。

地球上にあって、今猶、未発達な知性は、粗雑な物語に流されるのを好んだり、やはり粗い表面的論理を提示されるのを求めたり、あるいは特定の音韻形式に言語が乗せられるのを嬉しがったりする傾向があるが、自由詩形体のありようの一層の拡充実践によって、物語や表面的論理や韻律からの地球人の精神活動の解放は促進され得るだろう。

詳細は、実験のたびに情報集積装置へ吸い上げられているはずであり、そのつど分析と多面的な解析図も作成されているはずなので、此処では述べない。プロジェクト遂行者の主体位置から見た簡略な報告を行うのみに留める。

我々が考えたように、現在の地球上において、あえて日本語を選んだのは正しかったと思われる。漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、各種の数字から、様々な記号までをた易くひとつの文書内に受け入れ得る文字配列システムは、他の言語にあっては見出せない。紙やモニターの一平面上に、これほどの記号と記号の外部とを収容できる記載言語体系は、おそらく今後も地球上には見出せないだろうし、記載言語としてのこの日本語の豊饒さは、今後もさらに増していくばかりだろう。
記載言語としての世界は、今後、日本語のものとなるだろうが、そのためには、ある時点で、欧米諸言語の消滅が起こらねばならないだろう。全地球人が日本語を精神と血肉のベースとしなければならないからである。

すでに結論の出たプロジェクトをここで停止するか、それとも、猶も継続して別の観点による実験に利用していくか、それについては指示を待つ。いったん、私も帰星して、プロジェクト会議に直接参加したほうがよいとも考えるが、この点については、早急の回答を待つ。

834★2221907425∀ΗΞ08070605



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