ディジョンのマスタードにもいろいろあるが
ファロ&Cie*の商品はあまり使ったことがなかった
日本の輸入雑貨店ではマイユのものが目立ち
あれはあれで悪くないからディジョンの
マスタードといえばあの味と思ってしまうが
妻がパリで買ってきたファロ&Cieのマスタードは
マイヨのものよりはるかに旨くて絹のような舌ざわり
450g入りでその上かわいい缶に入っていて
小さなゴミ捨て用のビニール袋など入れておくのに
きれい過ぎないところがちょうどいい缶だから
台所に置いておくのにけっこう重宝している
ディジョンにはのんびりとブルゴーニュ旅行した際
ピエール**の自動車で立ち寄ったが駐車する時に
なかなか空きが見つからなくて困った
どこへ旅をしてもそんな不都合が次々押し寄せ
なかなか寛ぎ切ることができないものだが
そんなところも旅の醍醐味とやはり割り切るべきか
けちんぼのピエールは高いレストランには
まず入りたがらなかったものながらディジョンでは
ちょっといいレストランに入ることになってしまい
おかげで肉も旨かったがチーズを何種類もふんだんに
食べさせてくれて忘れがたいチーズ三昧の夜となった
退職して悠々自適のピエールとアンリエット***夫婦に加え
ぼくとエレーヌ****のカップルの四人で卓を囲み
21世紀はじまりの年の夏はたっぷりのブルゴーニュ三昧
あの時にレストランの卓にファロ&Cieがあったか
どうかわからないし注意もしなかったが
食にうるさいピエールはステーキにマスタードを
ちょっと付けようとしたぼくに「やめろ」と言い
マスタードなんかつけたらマスタード味しか
しなくなっちゃうからステーキにはやっぱり塩と胡椒さ
とパリジャンふうというか彼なりの
シンプルながら厳格な味覚追求のしかたを勧めてくれた
妻の買ってきたファロ&Cieを味わって思ったのは
これだったらステーキもよく生きる味だということで
マイユじゃまるっきりダメになっちゃうものな
と取り立てて高級なお話ではないものの味覚の新たな
発見をあのディジョンの夜から18年経っても続けている
とうに逝ってしまったエレーヌとピエールと
アンリエットに、味覚の神よ、祝福を与えられんことを
*Fallot &Cie Beaune, Moutarde de Dijon.
**Pierre Cussat-Bouton
***Henriette Cussat-Bouton
****Hélène Cécile Grnac
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