2018年12月26日水曜日

慰み物のサガワミツオ



掃除機をかけていたら
無性にサガワミツオが聴きたくなってきて
マイッタ

すぐに戻るつもりでちょっと出て
帰った時には
寒い師走のたそがれ
いい天気の午後だったので
布団だのなんだの
干したまゝ出かけたものだから
大いそぎで取りこまなきゃ
その前に
寝室をサッと掃除機がけしとかなきゃ
まァ
せわしない掃除時間

そうして
モーター音をがなり立て
掃除機
かけていると
なぜか
サガワミツオ
どうしてか
サガワミツオ

“遅かったのかい?”
“きみのことを”
“好きになるのが?”
という
あれ
「今は幸せかい」*の歌詞が
メロディーとともに
平成最後の師走のたそがれ
布団を取り込む前の
寝室掃除人の意識のなかに
漂ってくる

“ほかの誰かを”
“愛したきみは”
“ぼくを置いて”
“離れていくの?”
と鼻唄寸前
くっきりと思い出されてきて
脳内拝聴していると
なんと
まァ
くだらない歌

ある
ある
よくある
ありきたりのことを
未練たっぷり
うすっぺらな言葉
ならべて
“遅かったのかい”
“悔やんでみても”
“遅かったのかい”
“きみはもういない”
と歌ってきて
最後に
“いまは幸せかい?”
“きみはもういない”
と結ぶ
サガワミツオ
サガワミツオ

曲も簡単なら
歌詞も簡単なので
少年時代の下校時の鼻唄に
ちょうどよかった
サガワミツオ
サガワミツオ

別れた元カノや
元カレに
ひさしぶりに会って
それとなく向ける言葉なら
ジャズのスタンダードの
What's new?
のほうがはるかに素敵だと
まだ
知らなかった頃だから
下校時の鼻唄に
What's new?
How is the world treating you?
You haven't changed a bit
Lovely as ever I must admit.
なんて
もちろん歌わなかったし
ましてや
クリフォード・ブラウンのトランペットと
クインシー・ジョーンズ六重奏団を背景に
ヘレン・メリルが歌ったもの**など
子ども過ぎて
聴いたこともなかったし
伸びのある
堂々たる歌唱のリンダ・ロンシュタット***も
まだカヴァーしていなかった
昭和時代
高度成長期の頃の
ベトナム戦争の続いていた頃の
慰み物の
サガワミツオ
サガワミツオ




*佐川満男「今は幸せかい」
** Helen Merrill  Whats new
***Linda Ronstadt  Whats new




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