写真のイデア界から
ある日
精霊が下りてきて
ぼくに言った
わたしは写真の精霊
わたしは世界中に遍在していて
どこの誰の写真も
わたしの指や髪の毛や衣の裾
だから
あなたがじぶんで撮らなかった写真も
どこの誰が撮った写真も
みんなわたし
みんなわたしを降臨させようと
撮る行為を続けているだけ
いつの時代の
どこの誰が撮った写真も
だから
あなたが撮ったのとおなじ
じぶんが撮ったのも他人が撮ったのも
じつはどれもおなじ
さらに言えば
撮らなかったことも
撮ったことも
じつはまったくおなじ
こう聞いてからぼくは
以前よりもグッと撮らなくなり
ネット上にあふれ返る他人の写真を
ほゞじぶんの撮ったもののように見るようになった
楽になったよね
たとえば旅行に出た時など
おざなりの証拠写真的なものは一切撮らなくなったよね
じぶんの撮ったもののように見るようになった
といっても
“ほゞ”だからね
微妙なちがいがあるわけだけども
そこにまた
愉しみも
あそびも
あるというわけよね
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