2019年5月31日金曜日

凝縮



裁判所から出て車に乗るわずかの間、夏の夕方を、その匂いと色を感じた。
                    アルベール・カミュ『異邦人』



だれにも哀惜されないこともっとも激しく
花も線香も手向けられないひとを
驟雨のなかのようにひどく視界の悪くなっている薄やみを通して
しばらく見続けることにしよう
このひとのこころに
この国の現在は凝縮されていたのだ





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